2019年のグウェントのメタ環境を振り返る~前編~
2019年のグウェントにおいてその当時流行ったTier1のデッキをアップデートやメタ環境の視点から振り返りたいと思います。
なおTierやデッキの強さについてはTeam Leviathan GamingとTeam Aretuzaの当時のメタレポートを参考に記述しています。
リーダーアビリティについては当時と現在、両方の呼び方を併記しています。【例:メーヴ女王(現:王の激励)】
~グウェントホームカミングリリース~
2018年10月23日に約2年間のβ期間を経て製品版グウェントがリリースされた。
アーティファクト、イグニ、焦土の全盛期
製品版グウェントリリース時のアーティファクトは構築コストが低く(例:祖先のエールが10コスト、ペトリの魔法薬が5コスト)、現在のようにデッキ構築時のユニット13体制限も無かったためアーティファクトを多くデッキに組み込んだデッキが流行った。
結果としてユニットが戦場に並ばず、代わりにアーティファクトが並ぶ状況となってしまい、当時のグウェントユーザーはこれを「絵画展」と揶揄して呼んだという。運営はこの状況を深刻に見たのか、2週間後にはアーティファクト全般に調整が入り構築コストが1~3上げられることとなった。
その後は《ゲラルト:イグニ》や《焦土》、《竜の夢》などを軸としたコントロールデッキが流行った。しかし12月のCS版グウェントリリースと同時にこれらもナーフされ《ゲラルト:イグニ》は列の合計戦力値が15→20へ、《焦土》はコスト11→14へ、《竜の夢》はコストが9→12へと変更されたのであった。
~マリガンアップデート~
2019年1月10日にマリガンアップデートが配信された。これにより今までマリガンの回数でリーダーアビリティ間の強さを調整していたものが、構築コスト上限値で調整するようになった。
~奪われし玉座リーダー追加~
1月末には奪われし玉座のリーダーであるメーヴ女王(現:王の激励)、アーダル・エプ・デヒー(現:奴隷化)、エルデイン(現:闇討ち)、ゲルニコラ(現:ヤスギスの果実)、父殺しのアーンヨルフ(現:父殺しの憤怒)の5リーダーが追加された。
ゲルニコラの登場とビッグモンスターの盛隆
奪われし玉座の新リーダーのうち、最も環境に影響を及ぼしたリーダーは間違いなくゲルニコラ(現:ヤスギスの果実)だろう。それまでも決して弱くはなかったビッグモンスターがこのリーダーアビリティの登場によって更に強くなったのである。
《ネッカー》《アーチスポア》《ドラウナー》などのコスパの良い成長持ち低コスブロンズユニットと、《オールドスピアチップ》《カールドウェル伯爵》《ゴリアテ》《オズレル》などを中心とした高戦力値ユニットの暴力は当時の流行デッキの中で群を抜いて強かった。ゲルニコラをメタるために《ハンマーヴィンの蒼夢》を採用するデッキまであったほどだ。間もなくしてゲルニコラは構築上限コストが下げられる弱体化を受けたが、ビッグモンスターの時代はこれで終わることはなかった。
時期を同じくして破棄スケリッジもTier1に名乗りを上げた。このデッキの特徴は、リーダーのブラン・テルショック(現:献身的犠牲)と《ヘイマイの吟遊詩人》や《ビルナ・ブラン》の効果によってカードを破棄し、手札を回すことでデッキをほぼ引ききれることであった。例えば《ディメリティウム爆弾》や《胞子》などの特定の相手には刺さるが腐ることも多いメタカードを、必要が無くなった際に破棄の対象にし手札から捨てることで、相手に応じて無駄なく柔軟なゲームプランを立てられるのが強みであった。
また環境後期には《リッピー・ガドムンド》を採用した「ミラクルリッピー」なるデッキも登場した。
~紅き血の呪縛追加~
3月末にグウェント初の拡張セットである「紅き血の呪縛」が実装された。
吸血鬼やドリアード、同化、調和、自傷シナジーといったそれぞれの勢力において欠けていたアーキタイプが強化されると共に、出血、活力、シールド、毒、浄化などの状態が新しく追加された。
また5人の新リーダー、デトラフ・ファン・デル・エラティン(現:血の渇き)、アンナ・ヘンリエッタ(現:懐柔)、ダナ・メービ(現:調和の呼び声)、キャランセ女王(現:挟撃)、スヴァルブロド(現:熊の儀式)が追加された。
狼流派ウィッチャー三人衆の終焉、デッキ圧縮からサーチの時代へ
この拡張セット追加と同時に入ったアップデートにより、製品版グウェントリリースから約半年間第一線で活躍してきた《ヴェセミル》《エスケル》《ランバート》(通称:狼流派ウィッチャー三人衆)が大幅ナーフされた。
最初は7コス4点だった彼らも8コス2点になり、とうとう使い物にならなくなってしまったのである。また《ローチ》も9コスから10コスとなりニュートラルのお手軽デッキ圧縮カードが軒並み弱体化されることとなった。
逆に《勅令》や《ウィスペス:生贄》《メノ・クーホルン》《エルミオン》等の構築コストが下げられ、この頃からデッキ圧縮カードの代わりとしてサーチカードがよく使われるようになった。
強すぎたリーダー:デトラフ・ファン・デル・エラティンが速攻ナーフ
新リーダーであるデトラフ・ファン・デル・エラティン(現:血の匂い)のアビリティは実装当時以下のようなものだった
命令:ユニット1体に2ダメージを与える。(チャージ:3)
追撃:《エキムマーラ》1体を生成して無作為に選んだ自陣列に召喚する。
※エキムマーラは戦力値2のバニラユニット
汎用性の高い2点ダメージ×3回、更に追撃という条件はあるものの追加で得られる2点×3体、戦力値換算で合計12点分にもなるデトラフのアビリティの強さは瞬く間に広まり、ランクマッチはデトラフだらけとなってしまった。
何より問題であったのは、当時ダメージを与えるユニットのコストが現在より全体的に低く、デトラフのリーダーアビリティの強さと合わさって相手の出すユニットを延々と除去するだけで勝ててしまうということだった。エンジンユニットは出しても即除去されるため全く息をしておらず、この除去環境は後攻有利という問題も引き起こしていたのである。
当然、緊急ナーフが1週間で入りリーダのデトラフ・ファン・デル・エラティンは与えるダメージが2から1となり殆ど使われなくなってしまった。また、《デトラフ:上級吸血鬼》の復活回数が3回→2回と弱体化されたのもこの時である。
デトラフ弱体化後は追撃ユニットを多く入れたイースネ(現:急所攻撃)や破棄スケリッジ、ビッグモンスターなどのデッキが群雄割拠していたが、相変わらずダメージを与えるユニットが強い除去環境は変わらず、エンジンユニットを多く抱える北方諸国は苦戦を強いられるのであった。
~ニルフガードアップデート~
5月にはニルフガードアップデートと称した調整が入り、主にニルフガードの公開シナジーがテコ入れされた。リーダーのモルヴラン・ブーヒス(現:帝国陣形)や公開シナジーを持つカードが、兵士シナジーを持つカードへと大幅にリワークされたことで実質的に公開シナジーは消滅した。
ニルフガードはテコ入れされたが…
ニルフガードアップデートによって公開シナジーを持っていた産廃カードが兵士シナジーへとリワークされたものの兵士ニルフがTier上位に立つことはなかった。依然としてニルフガードの主流はミッドレンジニルフと呼ばれる中コストユニットを多く採用し、シナジーなど関係なくそれぞれが単体で活躍するカードを詰め込んだデッキであった。
しかし、そのミッドレンジニルフでさえ他の勢力に比べると弱かった(当時のTeam Leviathan Gamingのメタレポートでニルフガードは5勢力中最下位、不遇と言われていた北方諸国よりも評価が低かった)。この時代はまさにニルフガード冬の時代と言えるだろう。
破棄スケ、ビッグモンスターの時代の終わり
そして同時に長きに渡り環境トップに居座り続けてきた破棄スケリッジ、ビッグモンスターに調整が入ったことで遂に両者の時代が終わりを告げることとなった。特にこの調整の影響を大きく受けたのは破棄スケリッジで、リーダーアビリティのブラン・テルショック(現:献身的犠牲)やキーカードの《ビルナ・ブラン》、《コーラル》が弱体化されたことで一気にTier1から転げ落ちることとなってしまった。
スケリッジ全盛期の到来
上記の2デッキが弱体化されたと同時に台頭してきたのは、構築コスト上限値が増えたことで強化されたスケリッジのリーダー、スヴァルブロド(現:熊の儀式)と不具のハラルド(現:風切連撃)であった。
《オラフ》や《ヴィルドカール》などの高戦力値ユニットを有し、ビッグモンスターのように立ち回れるスヴァルブロドデッキと、《双斧のダグル》と自身のリーダーアビリティのコンボによりラスト1手で20打点も出せる不具のハラルドデッキの強さは凄まじかった。両者とも構築コストが上がったことで序盤・中盤・終盤と隙のない動きが出来るようになったのである。
その他にはアラキス・クイーン(現:アラキスの群れ)やブルーヴァー・ホーグ(現:ゲリラ戦術)、簒奪者(現:封鎖)等のデッキが、スケリッジをメタるために使われたがいづれも打ち負かすには及ばず、結果的にスケリッジが環境を牛耳ることとなった。
そして、スケリッジ環境に皆がうんざりしていた6月上旬に新拡張「ノヴィグラド」の追加が予告された。同時に新勢力「シンジケート」の追加も告知され、これにユーザーは大きな期待を寄せた。
だが、新勢力の登場によって良くも悪くもグウェントの環境が一変することをユーザーは後に知ることとなる。そしてスケリッジがTier1に立つことはこれ以降無かったのである…(後編へ続く)
↓各デッキの当時の強さはこちらのメタレポートを参考にしました