グウェント カード背景・設定トリビアその2~オフィル~
12月9日にグウェント4つ目の拡張セット「オフィルの商人」が事前情報無しに突如配信されました。
この拡張セットでは「ストラダジェム」「シナリオ」などの新要素の他にタイトルのテーマ通り“オフィル”に関するカードが複数追加されました。
今回の記事ではその“オフィル”についてスポットライトを当てて解説したいと思います。
※注意 この記事には「ウィッチャー3 ワイルドハント DLC1 無情なる心」のネタバレを含みます
そもそもオフィルとは何?
オフィルはニルフガード帝国のさらに南、海を越えた先の大陸に存在する様々な王国や部族からなる君主制国家です。1270年代にマリク(君主号のひとつ、一般的に支配者という意味)によって統一されました。ノヴィグラドやシダリスとは異なり貿易で頻繁に北方諸国と接触することはなく、北方人にとってオフィルは未だ多くの謎に包まれた土地であるそうです。
グウェントの「オフィルの商人」報酬手帳には以下のような記述があります。
一般的な北方人はオフィルのことを噂でしか知らず、その内容はでたらめなものばかりだ。しかし、そんな噂を流す者たちにも口を揃えて語ることがいくつかある…
まず、オフィルが海の彼方の世界の果てに位置しているということ。そして、オフィルには普通の動物が存在しないということ。馬の毛は白と黒の縞模様をしており、牛の尾は尻ではなく顔から生えているというのだ。
となれば、オフィルの商人が普通の人間の姿をしているのは驚くべきことだろう。彼らは1つの頭とあるべき数の手足を持ち、正しい位置に尻がある。だがその交渉術は悪魔のようであり、北方人には作れない見事な品を生み出すことができるのだ。
北方諸国の民は、オフィル人の目に野蛮人として映っている。その先進性で知られるニルフガードですら、彼らからすれば未発達な国と言えるのだ。オフィルの商人たちは大陸を渡り歩き、スコイア=テルによる奇襲やさまざまな苦難を味わうことでその考えをさらに強めることとなった。
“普通の動物が存在しない”とあることから、新カードとして登場したトラやラクダ、コブラなどは恐らくオフィル固有の生物なのでしょう、また“馬の毛は白と黒の縞模様をしており”はシマウマ、“牛の尾は尻ではなく顔から生えている”はゾウのことをそれぞれ指していると思われます。
また、ウィッチャー3で商人のデュラ・カマーニは自身の故郷であるオフィルについて次のように話しています。
いわゆるオフィルとは、様々な国や民族の集まりのことを指す。
大草原がどこまでも広がり、山々がそびえ立ち、澄み切った湖と未開の原野がある。
滅びた帝国、栄華を極める王国、決まった支配者を持たないが神話の中に原初の世界の記憶を伝える数々の部族が混在する。
ニルフガードも羨むような立派な塔の立ち並ぶ町に哲学者、医者、数学者、魔術師たちが住んでいる。
ウィッチャーの世界地図、ニルフガード帝国の更に南の地図に載っていない大陸にオフィルは存在している。
オフィルの歴史~起源から現在に至るまで~
起源の伝説
オフィルの古い伝説にはこうあります、
かつて空と草原が愛で結ばれ、そして最初の雌馬が生まれた。
人間と言う生き物はあまりに弱く、あらゆる危険に晒されていた。馬は人間を守り、乳を飲ませて育てた。人間が強く育つと、馬は彼らを背に乗せ、戦士として敵と戦ったのだ。
オフィル人が「馬たちが気高く、敬意を払うべき存在である」と考えるのはこの伝説によるものでしょう。
ニブラス王の統治
長い間オフィルは様々な王国が盛者必衰を繰り返してきたが、1270年代になり遂にニブラス王によって統一されました。
1272年、ニブラス王は王室御用達であるデュラ・カマーニに王に相応しい装備の設計図を託し北方へと行かせました。
ニブラス王はそれらの設計図をその土地の支配者であるラドヴィッド5世に贈り物として献上することで交易を深めようとしたのです。
時を同じくして第三次北方戦争の間、戦象や不死隊を含む大量のオフィルの軍隊がニルフガードと戦う北方諸国を支援するために連れてこられました。
※参考 グウェントに登場するオフィルの軍隊
彼らが北方諸国勢力のカードなのは上記の理由だからであり、イラストではニルフガードや(ニルフガードと協力関係にあった)スコイア=テルと戦っている様子が描かれている。また彼らは皆特徴的な兜と仮面をつけている。
ニブラス王の真の目的
ところが、ニブラス王がデュラ・カマーニを北方諸国へ送ったのには交易を深めるとは別に真の目的がありました。ニブラス王にはシルバト王子という息子がいて、王子は以前、北方諸国で行方不明になっていたのです。
オフィルからの最初の遠征を率いたのはデュラ・カマーニであった。とは言え、彼らの武器や煎じ薬にはそれ以前にも大陸へ渡った形跡が見て取れるため、正確には“記録が残っている限り”最初の遠征と呼ぶべきだろう。
加えてデュラの遠征が知れ渡ることとなったのには、あるひとつの側面が関係している。知識の探求や交易というのは、オフィルの真の目的を隠す建前に過ぎなかった。
強大なるニブラス王によって遣わされた彼の使命は、北方諸国への旅の途中で消息を絶った王の息子を探すことであった。しかしこの任務は不幸な結末を迎える。
王には息子の死が伝えられ、デュラはアッパーミルで次なる支持を待つこととなったのだ。辺境の暮らしに疲弊しつつ、彼は故郷への帰還を切望した。
~グウェント「オフィルの商人」報酬手帳より~
不幸な王子様の結末
ここから先の展開はウィッチャー3を遊んだことのある方ならご存知でしょう。王子は旅の途中でイリスというレダニア人の女性貴族と恋に落ちました。彼女の両親はこれを大変喜び、結婚の話をすぐさま進めました。しかし、これに納得がいかなかったのが彼女の以前の婚約者であったオルギエルド・フォン・エベレックです。彼女の父親から一方的に婚約の破棄を言い渡されたオルギエルドは、怒りから王子を呪い屈辱を与えることにしたのです。
その後、呪われた怪物となった王子はオクセンフルトの下水道に潜みはじめました。下水道に巨大なカエルに姿を変えられた異国の王子様がいるという噂は次々に広まり、人々はその怪物を「カエルの王子様」と呼んだのです。カエルの王子様は街の水路を汚染して病気を引き起こしため、事態を重く見たレダニア軍は1272年に下水道を閉鎖し調査を始めました。そして、王子が苦しむ姿を見るのに飽きたオルギエルドは、呪いを解く代わりにウィッチャーのゲラルトを雇ってカエルの王子様を殺させることにしました。もちろん、ゲラルトにその正体が本物の人間の王子様であるという真実は知らせずに…。
オルギエルド(左上)とその妻イリス(右上)、カエルの王子様(左下)とゲラルトに斬られ致命傷を負い呪いの姿が解けた王子(右下)
オフィルの主要人物(グウェントに登場するキャラクター含む)
ニブラス王
オフィルを統治する“マリク”、行方不明の息子を探すためにデュラ・カマーニを北方諸国へ送る。オクセンフルトの下水道で息子が亡くなったという知らせを聞いた後、息子を殺したウィッチャーのゲラルトの首を持ってくるようオフィルの戦士たちに命じた。
シルバト王子
ニブラス王の息子、王位継承前に大陸について学ぶため北方諸国を秘密裏に訪れていた。略奪愛でイリスと恋仲になったことから、オルギエルドに呪われ巨大なヒキガエルの姿に変えられる。そして数年後、何も知らないリヴィアのゲラルトによってオクセンフルトの下水道で殺されてしまう。
アマード
ニブラス王に使える宮廷魔術師、シルバト王子の呪いを解くためオクセンフルトに派遣された一団を率いていた。ちょうどゲラルトが王子を殺す場面に立ち会い、相応の罰を与えるべきだと考えゲラルトを逮捕する。その後、船でオフィルに帰還しようとするものの突然の嵐に遭遇し船は難破。陸路での移送を試みるも最終的に拘束を解いたゲラルトと対峙し殺される。
レイデヤ
アマードの死後、彼のポストを与えられた宮廷魔術師。
デュラ・カマーニ
オフィルからの第一次遠征隊を率いた王室御用達の商人。レダニアに来る途中で船が嵐に襲われ大破したが、彼の同僚であるルーン細工師、最愛の馬と共に生き残った。その後、アッパーミルに拠点を置きオフィルの工芸品等を売りながら活動を続けた。彼が北方へと派遣された表向きの理由は知識の探求と交易だが、真の目的はシルバト王子の捜索であった。
ルーン細工師
「学者兼工芸家で職人と魔術師でもある」と自称する人物。ルーン細工(武器や防具に文字を彫り新たな能力・特性を追加する魔法的な技術)という先進的な加工術を北方諸国へと持ち込んだ人物。
マラアル
ニブラス王に仕える暗殺部隊の隊長。
以上、オフィルとそれに関連する登場人物についての解説でした、この記事がウィッチャーの世界観についての理解を深め、グウェントがより楽しくなる手助けになれば幸いです。それではまた次の記事でお会いしましょう!